「コタンの口笛」
昔、私の小学校は全学年五クラスあって、
三年時と五年時にはクラス替えがあり
二年ごとにみんなバラバラになる。
ところが六年生の時担任の先生が調べたら、
私とG君だけが一年から六年まで同じクラスだった。
他には誰もいなかったから不思議だった。
私とG君は役員や係でも良く一緒になり活動した。
中学校は学区制で生徒は市内の二つの中学校に分かれる。
卒業式の日、G君はお別れの記念にと言って
一冊の本をプレゼントしてくれた。
それが「コタンの口笛」という児童文学の
名作といわれるものだった。
北海道のアイヌの姉と弟の物語だった。
私は夢中になって読み進んだ。
両親をなくした中学生の姉マサと弟ユタカが
差別と貧しさに耐えながら周りの人に助けられ
豊かに成長していく姿に深く感銘を受けた。
G君のくれた本は前編だっので
私は母に頼んで本屋さんに後編を
注文して買ってもらったほどだった。
中学、高校になっても何回も読み返して
私の人生に大きな示唆を与えてくれた本だった。
その後、G君とはついぞ会う事なく
あれから五十年近く経つ。
数年前の事だ、地元のTVニュースを見ていたら
中学校の話題があり校長先生がインタビューに応えていた。
その名を見てハッとした。G君と同じ名前!
あのG君ではないか、そういえば風の便りに
G君は教師になったと聞いた気がする。
思わずテレビ画面をじっと見たが
昔の面影は全然見当たらない。
人違いなのかと思った時、
G君のお父さんの顔が思い浮かんだ。
そうか、やっぱりG君だ、
お父さんにそっくりになったんだ。
G君はあれから沢山の生徒を指導した
立派な先生になったんだろうな。
そうしたらG君の最初の生徒は、本を読むように
手渡された私かもしれないー
なんて思ったりしている。
「友の慰めはたましいを力づける」聖書