自衛隊入隊記 【4】
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昭和53年2月。
24歳の若者は静岡県御殿場市にある
陸上自衛隊第34普通科連隊、後期教育隊に移動した。
御殿場は標高約500メートルの高原に位置し、
東は横に長〜く箱根の山がありそしてすぐ北に名峰富士がど〜んとそびえ立っている。
箱根山と富士山の谷間にあって、温暖な静岡県にありながら、
高地にあるので気候的には青森とさして変わらないよと先輩から聞いた。
まさかと思ったがそれは本当だった。
冬の期間はさすがに短いが、朝晩の冷え込みや雪が積もるのには驚いた。
北国生まれの北国育ちの若者は、ちょっとがっかり。
3階の庁舎の屋上から三百六十度見渡すことが出来る。
一つ驚いたのは、東側にある箱根山が朝日が昇るのを邪魔して
一向に太陽が姿を現さない。
私が住んでいた所は青森県東部、少し高いところに登ると
太平洋が見えるくらいフラットな平地なので、
毎日太陽は朝早く地平線から登るのが当たり前、
ところが御殿場は9時を過ぎても朝日が出てこない。
箱根の山の長い影が伸びてうす暗いのだ。
これがとても悲しかった。
しかし、北を見れば若者の心を鷲掴みにした日本一の秀峰が聳え立っている。
かっこいい!何時間でも見飽きない。ずっとここにいたい。
いよいよこれから、飽きるほど富士山を見ることが出来る。
素晴らしい。と思ったが現実は違った。
ご機嫌良く全富士を見ることはなかなか無い。
なぜなら、御殿場は雲の通り道だったのだ。残念!
いったいこの若者はここに何しに来たのやら。
もちろん、富士山を見るためではなく、優秀な自衛隊員になるためだ。
これから、汗と涙の訓練生活が始まる。
乞うご期待。・・・つづく
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